なぜGTASAのチートは適当な文字列でもオンにできてしまうのか?

GTAといえばゲーム内に内蔵されているチートコードというものがあり、GTA3以降はゲーム中に特定の操作をすると対応するチートがオンになる。3D UniverseのGTAのPC版(GTA3, GTAVC, GTASA)とGTAVでは特定の文字列を打つことでチートを使えるのだが(ただしVではチート用のウィンドウを先に出して打ち終わったら確定する必要がある)、GTASAだけはなぜか無意味で適当に見える文字列でもチートが使える。実はこれはGTASAでのチート関連の実装によるものなのである。

GTASAではチートコードの文字列判定にハッシュ関数を使っていた!

チートコード入力判定の技術的な仕組み

GTASAでハッシュ関数を導入し、SAではCRC32を使っている(HD UniverseではJenkins one-at-a-timeに変更された)。SAではハッシュ関数はGXT(ロックスターがいつも使う言語ファイル)でのテキストの検索したりチートコードが打たれたか評価したりするのに使う。

3D UniverseのPC版GTAではチート用に押したキーの履歴を30回分保存できるchar型の配列があるが(もちろんnull終端されている)、SAではキーが打たれたときにCRC32で最新の押されたキーの履歴を先頭にして(ASCIIでの値で)ハッシュ値の計算をして1バイト分進め、1バイト分ハッシュ化を進めるごとにチートコードが打たれたかどうかを(どれかのチートコードのハッシュ値と等値かどうかで)評価する。途中で見つかれば文字列の長さがチートコード側で意図している文字列の長さと一致してなくてもチートコードが打たれたとみなす。見つからなければnull文字にぶつかるまでハッシュ値の計算を続ける。チートコードが入力されたと評価されると、入力したキーの履歴はすべて消える(もちろんこれはSA側のチートコードの話であり、Modで似たような判定をしている場合はModの実装依存)。
だから実装次第で意図しない文字列でもハッシュ値の衝突により有効化される可能性があるのだが、SAではここが甘かったために実際に起きるしその例も多い(例:”INEEDSOMEHELP”のチートが”HESOYAM”でも使える。適当に見えるチートコードはすべて偶然できたものと思ってよい)。

ハッシュ関数とは入力された値に対して、決まった計算式で計算して適当に見える全く別の値を出力してくれる関数。高速で大きなデータを探したいときや、パスワードなどを復元はされたくないが一致してるかは確認したいときなどに使える。
ちなみにハッシュ値がどれかのチートコードのものと一致するか評価するのはキーを押して押された文字の履歴が変わったときだけなので、メモリ書き換えだけやってチートをオンにしようとしても無意味である。

SAで使うハッシュ値を求められるコードの実装例

static class Crc32ForSA
{
    private static readonly uint[] _crc32Table = new uint[]
    {
        0x00000000u, 0x77073096u, 0xee0e612cu, 0x990951bau, 0x076dc419u,
        0x706af48fu, 0xe963a535u, 0x9e6495a3u, 0x0edb8832u, 0x79dcb8a4u,
        0xe0d5e91eu, 0x97d2d988u, 0x09b64c2bu, 0x7eb17cbdu, 0xe7b82d07u,
        0x90bf1d91u, 0x1db71064u, 0x6ab020f2u, 0xf3b97148u, 0x84be41deu,
        0x1adad47du, 0x6ddde4ebu, 0xf4d4b551u, 0x83d385c7u, 0x136c9856u,
        0x646ba8c0u, 0xfd62f97au, 0x8a65c9ecu, 0x14015c4fu, 0x63066cd9u,
        0xfa0f3d63u, 0x8d080df5u, 0x3b6e20c8u, 0x4c69105eu, 0xd56041e4u,
        0xa2677172u, 0x3c03e4d1u, 0x4b04d447u, 0xd20d85fdu, 0xa50ab56bu,
        0x35b5a8fau, 0x42b2986cu, 0xdbbbc9d6u, 0xacbcf940u, 0x32d86ce3u,
        0x45df5c75u, 0xdcd60dcfu, 0xabd13d59u, 0x26d930acu, 0x51de003au,
        0xc8d75180u, 0xbfd06116u, 0x21b4f4b5u, 0x56b3c423u, 0xcfba9599u,
        0xb8bda50fu, 0x2802b89eu, 0x5f058808u, 0xc60cd9b2u, 0xb10be924u,
        0x2f6f7c87u, 0x58684c11u, 0xc1611dabu, 0xb6662d3du, 0x76dc4190u,
        0x01db7106u, 0x98d220bcu, 0xefd5102au, 0x71b18589u, 0x06b6b51fu,
        0x9fbfe4a5u, 0xe8b8d433u, 0x7807c9a2u, 0x0f00f934u, 0x9609a88eu,
        0xe10e9818u, 0x7f6a0dbbu, 0x086d3d2du, 0x91646c97u, 0xe6635c01u,
        0x6b6b51f4u, 0x1c6c6162u, 0x856530d8u, 0xf262004eu, 0x6c0695edu,
        0x1b01a57bu, 0x8208f4c1u, 0xf50fc457u, 0x65b0d9c6u, 0x12b7e950u,
        0x8bbeb8eau, 0xfcb9887cu, 0x62dd1ddfu, 0x15da2d49u, 0x8cd37cf3u,
        0xfbd44c65u, 0x4db26158u, 0x3ab551ceu, 0xa3bc0074u, 0xd4bb30e2u,
        0x4adfa541u, 0x3dd895d7u, 0xa4d1c46du, 0xd3d6f4fbu, 0x4369e96au,
        0x346ed9fcu, 0xad678846u, 0xda60b8d0u, 0x44042d73u, 0x33031de5u,
        0xaa0a4c5fu, 0xdd0d7cc9u, 0x5005713cu, 0x270241aau, 0xbe0b1010u,
        0xc90c2086u, 0x5768b525u, 0x206f85b3u, 0xb966d409u, 0xce61e49fu,
        0x5edef90eu, 0x29d9c998u, 0xb0d09822u, 0xc7d7a8b4u, 0x59b33d17u,
        0x2eb40d81u, 0xb7bd5c3bu, 0xc0ba6cadu, 0xedb88320u, 0x9abfb3b6u,
        0x03b6e20cu, 0x74b1d29au, 0xead54739u, 0x9dd277afu, 0x04db2615u,
        0x73dc1683u, 0xe3630b12u, 0x94643b84u, 0x0d6d6a3eu, 0x7a6a5aa8u,
        0xe40ecf0bu, 0x9309ff9du, 0x0a00ae27u, 0x7d079eb1u, 0xf00f9344u,
        0x8708a3d2u, 0x1e01f268u, 0x6906c2feu, 0xf762575du, 0x806567cbu,
        0x196c3671u, 0x6e6b06e7u, 0xfed41b76u, 0x89d32be0u, 0x10da7a5au,
        0x67dd4accu, 0xf9b9df6fu, 0x8ebeeff9u, 0x17b7be43u, 0x60b08ed5u,
        0xd6d6a3e8u, 0xa1d1937eu, 0x38d8c2c4u, 0x4fdff252u, 0xd1bb67f1u,
        0xa6bc5767u, 0x3fb506ddu, 0x48b2364bu, 0xd80d2bdau, 0xaf0a1b4cu,
        0x36034af6u, 0x41047a60u, 0xdf60efc3u, 0xa867df55u, 0x316e8eefu,
        0x4669be79u, 0xcb61b38cu, 0xbc66831au, 0x256fd2a0u, 0x5268e236u,
        0xcc0c7795u, 0xbb0b4703u, 0x220216b9u, 0x5505262fu, 0xc5ba3bbeu,
        0xb2bd0b28u, 0x2bb45a92u, 0x5cb36a04u, 0xc2d7ffa7u, 0xb5d0cf31u,
        0x2cd99e8bu, 0x5bdeae1du, 0x9b64c2b0u, 0xec63f226u, 0x756aa39cu,
        0x026d930au, 0x9c0906a9u, 0xeb0e363fu, 0x72076785u, 0x05005713u,
        0x95bf4a82u, 0xe2b87a14u, 0x7bb12baeu, 0x0cb61b38u, 0x92d28e9bu,
        0xe5d5be0du, 0x7cdcefb7u, 0x0bdbdf21u, 0x86d3d2d4u, 0xf1d4e242u,
        0x68ddb3f8u, 0x1fda836eu, 0x81be16cdu, 0xf6b9265bu, 0x6fb077e1u,
        0x18b74777u, 0x88085ae6u, 0xff0f6a70u, 0x66063bcau, 0x11010b5cu,
        0x8f659effu, 0xf862ae69u, 0x616bffd3u, 0x166ccf45u, 0xa00ae278u,
        0xd70dd2eeu, 0x4e048354u, 0x3903b3c2u, 0xa7672661u, 0xd06016f7u,
        0x4969474du, 0x3e6e77dbu, 0xaed16a4au, 0xd9d65adcu, 0x40df0b66u,
        0x37d83bf0u, 0xa9bcae53u, 0xdebb9ec5u, 0x47b2cf7fu, 0x30b5ffe9u,
        0xbdbdf21cu, 0xcabac28au, 0x53b39330u, 0x24b4a3a6u, 0xbad03605u,
        0xcdd70693u, 0x54de5729u, 0x23d967bfu, 0xb3667a2eu, 0xc4614ab8u,
        0x5d681b02u, 0x2a6f2b94u, 0xb40bbe37u, 0xc30c8ea1u, 0x5a05df1bu,
        0x2d02ef8du
    };
    internal static uint Crc32FromBytes(byte[] bytes)
    {
        uint hash = 0xFFFFFFFF;
        foreach (var val in bytes)
        {
            hash = _crc32Table[(hash ^ val) & 0xFF] ^ (hash >> 8);
        }
        return hash;
    }
}

RTAでも深刻なチートコードの問題

HESOYAMとかなら別にいいだろと思うかもしれないが、そうもいかない。GTASAのRTA(speedrun)で申告な問題になりえる移動キー(WASD)だけでオンにできるキーの入力の組み合わせも見つかっており、人によっては笑えない事態にもなってしまっている。

speedrun.comのルールではゲームに内蔵されているチートコードが有効化されてしまった場合は意図しないものでも容赦なく記録として認められなくなってしまう。3D UniverseのGTAでのチートコード用のキーの履歴はキーボードでしか記録されず、コントローラーでやればRTAでこの問題には遭遇しないのだが、speedrun.comで記録を載せている走者はどうもキーボード派が多いようで、移動キーの入力を変えている人もいる。

RTAでの意図しないチートの発動例


まとめ

大きなデータの高速な検索やメモリのスペースの節約に使えるハッシュ関数も使い方を間違えれば極端な場合は移動キーだけでチートをオンにしてしまうなどの災いの元になりかねない。RTAは通常のプレイより細かい操作を求められるので、移動キーだけで発動できてしまうチートがなおさら深刻な問題になるのだ。

ゲームをするユーザー側はゲームの開発側がハッシュ値の取り扱いを間違えたことで意図しない挙動を起こしかねない挙動が起きることもあることを覚えよう。ソフトの開発者は検索の高速化や省スペース目的などで(暗号学的でない)ハッシュ関数を使うときは移動キーだけで意図しないチートの発動などの深刻な失態を起こさないように実装しよう。

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