PS2とPS3用の日本語版GTASAは、単体で見れば我慢できるかもしれないが英語版などの無規制版と比べて明確に面汚しなところがあるバージョンだ(スマホ、いやモバイル版は基本テキスト関連の規制だけ)。しかし、具体的に何が規制されているかをほぼすべて把握している人は少ないかもしれない。
英語がわかる読者は下に載せているVadim M氏の日本語PS2版のまとめ動画を確認しておくとよいかもしれない。今まで見落とされがちだった規制部分も多く取り上げられている。
Vadim M氏も規制の内容を紹介する動画をYouTubeにアップロードしたことだし、ここでできるだけ詳細かつ正確にまとめておこう。
実行ファイルによるゲームプレイ面の規制(PS2版とPS3版で共通)
ここで挙げたものの多くは、PC版でもフラグ変数や特定の関数の命令を書き換えることで再現可能。
人が死亡しても、人の種類に関係なくお金を落とさない
売人1人につき約$2000落とすのを利用して稼げなくなるので序盤が大変。また、基本的にミッションの報酬金以外で稼げなくなり、死体から出た金でミッション中にちまちま稼ぐ技も封じられるのも地味にきつい。
なお、警官や軍人などの近くであらゆる犯罪を起こすと即手配させる人と救急隊員と消防士(正確にはPedTypeが6か18か19の人)は無規制版でも金を落とさない。
オレたち売人がカネのために殺されなくてせいせいするぜ。
近接攻撃で倒れた人に追い打ち用攻撃を出せず、銃で死体を撃ってもピクンと動くアニメーションなし
近接攻撃を倒れた人の近くで出しても普通の攻撃しか出ない。こんな状況ではバットや警棒やシャベルみたいに通常の攻撃も下方向に判定が広いものが意外と役に立ってしまい、ナイフなど下方向の判定が狭いのが不利になってしまうのだ。
死体に銃を撃ってもピクンと動くかのようなアニメーションをしない。死体が撃たれても血が出るだけ。
また、ジム追い打ち攻撃を教える部分のテキストが何も表示されない。追い打ち攻撃できるモバイル版ですら。
絶対に頭が欠損しない
ピストルと消音ピストルとサブマシンガン以外の銃でヘッドショットされたときや爆風で頭が欠損しない。明確なデメリットは、ミッション用に消えない処理をされていない一般の人が救急隊員に蘇生される可能性をゼロにできないことだけ!
見た目以外のささいな違いとしては、人が声を出しているときに一瞬で声が止まらないのと2つのミッションの頭部欠損による違いが見れないこと。
2つのミッションでの頭部欠損で発生する違いは以下のとおり。
- “Cleaning the Hood”で最初に倒すヤクの売人がカットシーンが始まる直前に頭部欠損していないとカットシーンでカメラが揺れるが、欠損していると揺れない。
- “Badlands”でターゲットの証人が頭部欠損していると即ミッション失敗。メモリ書き換えで生きたまま頭部欠損させてもミッション失敗になることを確認済み。
死亡した瞬間ロックオンが外れる
ロックオンしていた人が死亡すると(ステルスキルの終盤以外は除く)その瞬間にロックオンが外れる。
人によってはうっとおしく感じさせるPS2版はともかく、PS3版は自動でロックオンしまくるので意外と悪影響は少ないかもしれない。
コンバインで人を収穫しても分離した人体のオブジェクトが出ない
PS2日本語版やPS3日本語版でコンバインハーベスターを使って人を収穫してもバラバラ人体のオブジェクトは出ずに血の色の煙のエフェクトだけ出る。
なお、血を出すかどうかの関数(PC版の1.0では0x56D230の関数)がfalseを返す状態にしとくと血の煙が出なくなる。
実行ファイルによるゲームプレイ面の規制(PS2版のみ)
特定の犯罪をすると即手配
メインストーリーを進めるうえで最も悪影響が大きく面倒な規制だろう。具体的には手配されていないときに
- 銃弾と爆発を人に当てる(この2種は共用の犯罪)
- 人を燃やす
のどちらかをすると即手配度1がつく。銃弾に関しては死体や銃弾に対して無敵の人に当てても即手配される(無規制版でもこれらは犯罪を起こした扱いになることが原因)。
ギャング関連が一番面倒で、”Drive-By”以降見つけると即CJを殺そうとするバラス(非ミッション時にスポーンしたもの)の対処には特に手を焼かされるだろう。ポン引きで関係を戻すのもmain.scmによる規制のせいで使えない。
ギャング抗争するにも手配度1がつくのが頻発し、地味にうっとうしい。抗争中は犯罪を犯しても手配度が強制的に上がる行為を除き手配度の内部数値が上がらないため、手配度0以外からは手配度の星が増えないのだが1SA以外の3D UniverseのGTAと違いSAには即手配度2以上になる行為はない、手配度1で抗争が終わったら20秒は手配度の星が完全に消えないことを覚悟しなければならない。なお、モバイル版ではギャング抗争中は手配度が0に固定されるようになった。
爆発や火炎で自分自身にダメージを与えてライフを減らすときも即手配され、機会の多さは人によるだろうが地味にこれも悪影響が大きい。
消音ピストル(サイレンサー付きピストル)は無規制版でも手配度の内部数値の上昇度は他の銃や爆発と同じだからな!間違えるなよ!
この即手配の規制に関連して、PS2日本語版では正当な殺人の回数(英語では”Total legitimate kills”)2塗装屋で手配を消したりセーブしたりミッションクリアで手配が消えると「最終チェックポイントからここまで殺した人数」の値がゼロになり、その分だけ「正当な殺人の回数」が増える。WastedやBustedやただスクリプトで消すだけでは増えない。がステータス(Records)に記録されない。PS3日本語版では記録される。
ちなみに、即手配される犯罪を犯した場合は警察無線の音声が流れない。PC版でも0xB9B7EDの値(ドイツ語版用の規制フラグ)を0以外にして即手配の規制を有効にすることで確認できる。おそらく即手配されたときの無線の音声流しの処理を忘れたのだろう。
火炎ダメージを受けてもうめき声が出ず、焼死しても黒っぽくならない
こんなんで困るの?と思うかもしれないけど、次のような場合はどう思う?
- 消火ミッションをクリアしてCJ(プレイヤー)に火炎ダメージ耐性がついてるか忘れてしまった
- 火炎ダメージ受けない人(例:消火ミッションの消火対象の人)は仮にスクリプトとかのせいで燃えてても規制フラグ関係なく叫ばないって知ってた
車両の衝突で即死させてもペチャリと音がならない
即死するほどのスピードで衝突ダメージに耐性がない人にぶつけると上に飛ぶか即倒れてペチャリと骨が折れたかのような音が出るが、PS2日本語版ではその音は出ない。
ちなみに、PS2日本語版では、原因不明でライフは0.0以下になったときにとりあえず死ぬタスクがかけられたとき(例:警官が他のNPCを攻撃中に死ぬ)や落下ダメージで人が死亡したときは音が出る。
実はこれらの2つの場合は血を出すかどうかの関数(PC版の1.0では0x56D230の関数)の返り値で決まる。false(0)だと、原因不明のライフゼロで死亡は断末魔だけ、落下ダメージで死亡はペチャリとした音でなく落下ダメージを受けて死ななかった場合の音が代わりに流れる。
売春婦を車に乗せて性的なことをしても、CJも売春婦も全然喋らない
車の揺れはあるが…
なお、これらはPC版のexeを見る限り最初からフラグで分岐しているというわけではない模様。
カットシーン(か自由に動けないシーン)の表現面の規制(特筆なきものはPS2版のみ)
“Reuniting the Families”で警官がバラバラになるシーンが削除されている
PS2日本語版でもPS3日本語版でもヘリのローターが近づいて警官が消えるときに、血のエフェクトとバラバラの分離した警官の人体のオブジェクトが現れない。
PS2日本語版ではさらにカメラが本来より早いタイミングで切り替わる。
“Gone Courting”の拷問シーンがまともに聞けない
PS2日本語版ではCJがカタリーナの隠れ家に入ったところでカットシーンが終了。何してたの?ってなるわな。
PS3日本語版では拷問シーンはあるがずーーーっとミュート状態。字幕で内容をある程度は把握できるだけマシだろう。
5つのミッションのカットシーンでヤクを吸うシーンとヤクを吸うためのオブジェクト削除
ヤクを吸う部分があるカットシーンを含む問題のミッション3つは
- Body Harvest
- Ice Cold Killa
- The Meat Business
- Beat Down on B Dup
- End of the Line (main.scmの”FINALEA”のスレッドのやつ)
一番自然に消されてるのはダントツでIce Cold Killa。カットシーンの最初が少し削れてるだけ。次点でBeat Down on B Dupだが、“THIS is what it boils down to now”(意訳「こいつ(ヤク)のせいや」)のthisがヤクだとわからない。
他3つはかなり不自然で、具体的にリストで挙げると、
- Body Harvestではボングを持ってないのにテンペニーの手は変わっておらず、自慰行為してんじゃねーのか?という疑問が起きかねない。
- The Meat Businessはずーーっと無駄にズームしてる。最初だけでええやろ!
- End of the Lineでは、ヤクを吸うシーンが削除されて結果的に会話の流れ的にも不自然なぶつ切りの映像に見える。
“Jizzy”のカットシーンで人のモデルが一部変わってる
“Jizzy”ではカットシーン専用モデルのストリッパーが非カットシーン用の人(BFYPRO)に変わっているが、通常用のボーンのウェイトがかかっているところを入れていないせいで、通常用の顎のウェイトがかかっている頂点が頭のボーンのあるところに引っ張られている33D UniverseのGTAでは、特定のボーンがどのアニメーションでも動かせていないとウェイトがかかっている頂点が親ボーンの座標に引っ張られてしまう。
ミッション”Madd Dogg”でマッド・ドッグが飛び降りるシーンで、着地シーンでもカメラが車の近くに置かれず飛び降り前のまま
たしかにグロさは弱まってるかもしれないが…
テキスト関連の規制
テキスト関連の規制はほとんどがPS2日本語版、モバイル版の日本語テキスト、PS3日本語版すべてに存在する。いくら規制のかかっていない部分が比較的良質な訳とはいえども(説明不足なところはそこそこみられるが)、余計に捻じ曲げられた規制のかかってる部分も少なくない。
「バラスの息のかかった」一般人(しかもどれもバラスの勢力圏外で)
バラスの息のかかった一般人(のはず)がテキスト上で登場するのは
- 555 We Tip
- Deconstruction
- Architectural Espionage
の3つ。しかも、3つともサンフィエロかラスベンチュラスのミッションでバラスの勢力圏外。規制するにしてもサンフィエロ・リファ(かダナンボーイズ)とイタリアンマフィアが泣いちまう。
ポン引きミッションが人材派遣ということになっている
main.scmを改造しない限りモバイル版限定の話になるが、ポン引きミッションが人材派遣ミッションということになっている。
ちなみに行き先用の字幕はすべて「~y~派遣先~s~に向かえ」になっている。
いかがわしい単語の置き換え
一部はPS2日本語版のみだが、ほとんどがモバイル版(PS3日本語版も同じテキスト)でも存在する。
ライダーの”water” (PCP?)が「酒」と訳されている
PS2日本語版ではライダーの”water”(PCP?少なくともヤクではある)が「酒」と訳されている。モバイル版とPS3日本語版では「ヤク」と訳されている。
採石場のミッションの死体の訳が死体でない
PS2日本語版では警官の死体が「マネキン」で、処分する白バイも偽物だと匂わせるような訳になっている。それも敵の目をあざむくためらしい。さらに、未使用だが爆弾犯の死体を処分するのでなく爆弾犯の遺留品を処分するということになっている。
モバイル版とPS3日本語版ではこれらの婉曲表現による規制はされていない。
性的な単語の削除or置き換え
具体的には
- ガールフレンドとデートを成功させて帰ったあとにコーヒーのお誘いを受けるときの字幕は、”Gird your loins for love…”の部分が訳されていない。
- コーヒー飲むだけで性的なことなど何もありゃしないと言わんばかりに。PS2日本語版以外ではあえぎ声あるのに。
- ミッション”Jizzy”で、売春関係の単語が婉曲されている。売春サービスなんて関係なかった!?
- “punter”(客)の部分がただ単に「クソ野郎」に
- “rival pimp”は「勘違い野郎」に
- “pimpmobile”はただの「車」に
ドラッグ関連の規制
原文ではマイクロドットやアシッドなど具体的な名前が出ていても、日本語テキストでは「ヤク」以上に詳細には訳されていない。それ以外のドラッグ関連の規制は、
- “Robbing Uncle Sam”で、ライダーが10歳のときから「ヤク売買してたからだろ」ではなく「ボケてたからだろ」と訳されている
- “Are You Going to San Fierro?”のテキストから麻薬関連の言葉がほぼすべて婉曲されている
- 「麻薬捜査官」だけはかろうじて出てくる。
- “555 We Tip”でヤク(実際はマリファナ4WCTRのニュースで地方検事の車からヤクが出た事件が“marijuana”という単語を使って報道される)を詰め込むところでプレゼントを詰め込んだことにされている
- “Grove 4 Life”で、最後のカットシーンでスウィートが”Probably drug money”という部分を「どうせ汚れたカネだ」と訳されている
地域や建物の名前の規制
2007年でなく2011年にリリースされたPS2日本語版はgxtテキストファイルが古いようで、地名の規制がややゆるい。
- “Crack Den”でなく”Vicious Den”(2011年版は元のまま)
- “Smoke’s Crack Palace”でなく”Smoke’s Fortress”(2011年版は”Smoke’s Crack Fortress”)
- “Strip Club”でなく”Night Club”。どの日本語版でも同じ。
- リル・プローブイン(Lil’ Probe Inn)のストリップクラブだけは、2011年版では”Strip Club”のままで他のバージョンは”Club”。
殺戮ミッションの目的のテキストに、ギャングでいっぱいだ!と付け加えられている
まあ普通の人はちゃんとスポーンしているのだが…
main.scmによる規制(PS2版とPS3版で共通)
main.scmとは、ミッションの内容やミッション開始用のトリガーとなるスクリプトなどが書かれているスクリプト。
ポン引きミッション(人材派遣ミッション)が削除されている
ポン引きミッション自体はともかく、終了時に進行度に関係なくバラスの関係性がスタート時と同じように戻る(すぐ殺そうとするのでなく最初は付け回す)バグの恩恵を受けられないのはPS2日本語版では意外と痛かったりする。
正確にはPS2日本語版では開始トリガー部分と”PIMP”スレッドのミッション部分を全部削除されており、PS3版では開始トリガー部分だけ削除されている。
ちなみに、PS2日本語版の時点でポン引きミッション開始時の”Pimping”は「人材派遣ミッション」と訳されている。
2人プレイで一般人殺害が目標のものが削除されている
少なくともPS2日本語版では殺戮ミッションの挑戦回数とクリア回数、殺戮ミッションで人や警官の殺害人数や車両の破壊した数がステータス(Records)から削除されている。
main.scmによる規制(PS2版のみ)
ガールフレンドとデート成功して家に帰ったあとにコーヒーのお誘いを受けてもあえぎ声なし
なお、PS2日本語版でもPS3日本語版でもカメラは揺れず定点カメラだが、PS3日本語版に関してはベースのモバイル版の時点で定点カメラなので責めることでもないだろう。
PS2日本語版ではコーヒーのお誘いを受けてもカメラも揺れずあえぎ声もしないという、ただただ退屈なシーンが流れる。
採石場ミッションの4番目が削除されている
採石場ミッションの4番目、爆弾犯の遺体を焼くミッションが削除されている。しかも、採石場ミッション全クリアの報酬が$2000減って$8000しかもらえない。
実は多くの未使用テキストと同様に削除された採石場のミッションのテキストも訳されているが、テキスト上は爆弾犯の死体そのものでなく遺留品を捨てるということになっている。なんだそりゃ!?なお、モバイル版やPS3日本語版では「遺留品」は「死体」にちゃんと書き換えられているのでご安心を。
3Dモデル関連の規制
カットシーン限定のものは除く。
アダルトショップの看板の”SEX SHOP”が書き換えられている
PS2日本語版では”SHOP“、PS3日本語版では”FUN SHOP“に書き換えられている。また、両バージョンともに真ん中のXXXの部分が削除されている。
ストリップクラブのダンサーと”Key to Her Heart”の店員がより穏やかなモデルになった
PS2日本語版でストリップクラブのダンサーと”Key to Her Heart”に登場する店員のテクスチャーがより穏やかなものに。
性的なポスターが完全に子どもに優しいものに
一部の買える隠れ家の中に飾ってあるヌードポスターがヤシの写真に。しかし、アダルトショップにある同じヌードポスターはそのまま。アダルトショップならええんか!?
規制されていると他のサイトの記事で書かれているが、実は規制されていないこと
鳥を撃って消す
無規制版でもPS2日本語版でもスナイパーライフル以外で(カントリーライフルはOK)撃てば即消えます…
悔しかったらカントリーライフルなりM4なり自分の得意なスナイパーライフル以外の武器で鳥を撃ってみることですな!
まとめ
PS2日本語版とPS3日本語版のGTASAは、GTAVとかと違ってゲームバランスに関わってる規制が多いからやっぱ無規制版と比べて有意な差が出るレベルでキツイっすわ。PCでプレイできる環境が整っていればPC版を検討しましょう。
まだ見落としているところがあると思っているので、他に規制と言えそうなところがあったり規制なんじゃないのかという疑問があればご教授いただけるとありがたいです。
PC版は無規制かつ日本語化できます
PC版は表現規制なし、ゲームプレイ面の規制なしで日本語化して楽しめる。いくらかの苦労をためらわないならベストなバージョンなのでぜひ検討していただきたい。
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